| 「★たのしいミニ・プラネタリウム★」を復刻する |
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今から 25年くらい前だったと思う。天文関係の工作型紙を集めた切り抜く本があった。この中に紙製円筒にキリで穴を開けるだけという単純な構造の投影機で、部屋の壁に星を映そうという、「ミニ・プラネタリウム」が載っていて、ひどく気に入った記憶がある。
数年前から、これをまた作りたくなって、型紙を探していたのだが、当時の本は絶版のようだったし、最近になってインターネット・ホームページで見つけた、これに似た型紙も、当時のものとは異なるものだった。
V/50 -- The Bright Star Catalogue, 5th
Revised Ed. (Preliminary Version) (1991) に、星の座標データを見つけたのをきっかけに、自作するしかないかと悶々としていたゴールデンウィーク。夕方のニュースで、近くの児童文化センターで行われた工作教室の映像が流れた。型紙の特徴は、当時の記憶に酷似してた。ヽ(^o^)ノ
早速センターに連絡を取ると、型紙のコピーをいただける事になった。翌日型紙を受け取りに。「コピーむらがあるのでマジックなどで塗りつぶして使って下さい。」とのアドバイス。年2回行われる工作教室では、輪転機で印刷して用意するらしい。気になる版権については、営利目的以外であればコピーして使っても構わないとの事だった。
さて、この型紙を使ってしまっては、一度きりでお仕舞いである。身近なガキ共にちょっかいを出すのが趣味なので、何台も作る必要がある。このコピー自体、星の図がかなりつぶれてしまっているから、コピーを繰り返す方法は使えない。
星も紙を重ねて書き写すよりはプロットし直した方が簡単そうだった。記憶ではあいまいだった、細かい構造や各部の寸法決定の手本として、この型紙を使う事にした。
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型紙のタイトル。当時のままである。
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いただいたオリジナルの型紙。B4 4枚。
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早速型紙から採寸して分析する。妙な事に気がついた。投影機の円筒を支える極軸の傾きが 42度となる展開図だったのである。この傾きは、観測地の緯度にあたるので、日本用であれば東京の北緯
36度で作るのが一般的なはず。札幌の 43度に近い、高緯度仕様になっていたのである。
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極軸の傾きは 42度だった。
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ひょっとして、首都が高緯度にある他の国でできたものがオリジナルなのかも、と想像をめぐらせつつ、ここは一つ北緯
36度仕様で作り直そうと思った(ここ北九州の北緯に合せようなどという偏狭な事を全く考えなかった訳ではない)。
しかし、この判断は後で後悔する事になる。
まずは、星のプロット。天球上の星の座標は、(赤経, 赤緯)で得られるので、これを円筒型投影機の展開図にプロットする事になる。
本来球形の投影機にすべきところを、その球形をぴったり覆う円筒で済まそうという訳なので、赤径については、そのまま極軸周りの角度として利用できる。
赤緯については、下図のように、±45度を境に北天円板の半径座標(r tan (π/2 - φ))と、円筒部の高さ方向座標(r
tan θ)が得られるので、これらを使って、展開図上の星の位置を求める事ができる。
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投影機の極軸断面図
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V/50 -- The Bright Star Catalogue, 5th
Revised Ed. (Preliminary Version) (1991) からダウンロードできる 5050_catalog.dat は、星の座標以外にも多くの情報を含んでいるが、ここで必要なのは、赤経,
赤緯と等級なので、これらに相当する列から情報を取り出す。
| 赤緯 |
declination (DE) |
| 赤経 |
right ascension (RA) |
| 等級 |
visual magnitude |
星を投影するピンホールの直径の決定方法。
紙にキリで穴を開ける方式なので、0.5mm 以下の穴を開け分ける事は難しい。一方、明るい星が月のように投影されるのも困る。試行錯誤の末、次のような二次関数(ピンホール径
= (等級 - 5)**2 * 4 / 90 + 0.5)を採用した。
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ピンホール径を決める関数のグラフ
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実際には、赤緯が±45度に近づくにつれ、光源からピンホールが遠ざかるため、同じ等級の星像を一様に投影するためには、ピンホール径を大きめに補正する必要があるところだが、とりあえず無視。
プロット出力は、CAD ソフトで編集できるように DXF 形式で行う事にした。幸い普段から使っている Vellum CAD Standard
は、DXF の図形要素を表す、ENTITIES セクションだけあれば、思ったようにインポートしてくれた。後はこれに星を表す小さな円を吐き出してやればよい。
DXF ファイルはテキスト形式で、平面図形の円を出力するだけなら、次のように簡単なものになる。
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0
SECTION |
セクションの始まり |
2
ENTITIES |
ENTITIES セクションの始まり |
0
CIRCLE |
円図形の始まり |
8
EQ-A |
画層指定(画層名 "EQ-A") |
10
5.5969466 |
X座標 |
20
133.2504779 |
Y座標 |
40
0.25338 |
円の半径 |
|
:
|
:
|
0
ENDSEC |
ENTITIES セクションの終わり |
0
EOF |
DXF ファイルの終わり |
|
5050_catalog.dat を入力とし、指定した等級以上の明るい星を抽出して、作ろうとする円筒の展開図上にプロットするスクリプトを
ruby で書いた。
実際には、円筒面と北天円板の境界部分にも、星座線を描きたかったので、展開図の外部にもだぶってプロットしている。また、後々作業し易いように、北天、円筒面A、円筒面B、外周部などに対応する画層に振り分けてプロットするようにした。
とりあえず 5等級以上の星をプロットする事にした。こんな具合である。
これに CAD 上で、星座線を書き込む。
オリジナルは、主要な星座についてだけ星座線が書かれていたが、この際書けるものは全部書く事にした。しかし、星座線をどう書くべきものなのかを知らない。ここは追求する事はせず、愛用のプラネタリウム・ソフト
Stella Theater Pro の表示を参考に見ながら書き込んで行く。これが結構大変。展開図の星図は、投影機用なので、左右裏返しなのである。
さらに、星座名、明るい恒星の名前などを、星や星座線に重ならないように書き込んで行く。
展開図に必要な画層だけを表示するとこんな具合。
これを、展開図として仕上げて行く。A4 のケント紙に縦に印刷する事を想定し、工作のし易さも考慮して、紙の繊維に合わせた配置を考える(丸め易いように)。
次は、これを作り易いように印刷できる文書にする作業。
オリジナル型紙は、黒塗り背景に白線の図が描いてあったが、切り落とすべき部分と残すべき部分の色が同じなので、誤ってのりしろを切り落としてしまったりし易い(当時やってしまった記憶あり)。切り抜く部分以外は白背景としたい。
いろいろと試行錯誤した結果、Vellum CAD Standard から Adobe Illustrator の AI 形式でエクスポートし、Illustrator
で仕上げる方法を採用した。これなら、画層情報を保ったまま、原寸で正しく編集できるし、黒ベースの部品に、星や星座線などを白で描く事ができる。
Illustrator では、CAD のように幾何学的にびしっと図形を合せる事は苦手なようなので、図形的な編集はできるだけ
CAD 側でやっておく必要があった。Illustrator で作業中に不都合に気がつくと、その度に CAD でやり直す事になって、実際はかなりつらい作業だった。
この辺で仮組みしてみる。星の穴を開ける作業は、これまた忍耐が要る仕事なので、それをやった後で、組んでみたらおかしかったでは暴れたくなるだろう。
紙の厚みの考慮などで、多少修正するところがあったが、だいたい良い感じ。
そこで、電球ソケットを取付けてみようとした。ところが...
極軸円筒の壁に、電球ソケットの底がぶつかって、きちんとはまらないのである。
これはつまり、オリジナルよりも極軸を寝かせて作り直した副作用である。不覚にも、電球ソケットの干渉チェックをやっていなかった。
下図は、CAD 上で干渉する事を確認するとともに、動揺のあまり極軸の壁に穴を開けたりして、何とかならないか悩んでいるところ。
思えばこのプラネタリウムの構造では、極軸の傾きの多少の違いなど大した問題では無い。見る人が投影機の電球の位置に居る事はできないのだから、投影される星は、すでに相当にいい加減なのだ。
図面に描いてみると、オリジナルの極軸の傾きは、豆電球ソケットが奇麗に収まるぎりぎりの角度だった。
一方、極軸をもっと太くすれば電球は収まるはずである。ところがこれも、極軸の展開図の幅が大きくなり、A4 用紙に収めるのが難しくなる。
オリジナルは、結構考えられた設計だったのである。
極軸の傾きはオリジナルに従う事にした。
さて、それでもささやかな改良を施した。
北天円板ののりしろは、オリジナルでも、恐らく円筒部分の星に重なりにくいように、かなりまばらに配置されている。それでも、円筒部分の星に重なるところがある。予め、重なる場所はわかるので、必要な部分にはのりしろに切り欠きを設けた。
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北天円板ののりしろ
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北天円板、円筒部分、目盛の付いた外筒は、春分点を通る線(型紙では「中心線」と表示)を基準に、工作時に合せて接着する必要がある。これがやり易いように、のりしろの一つが中心線の位置に来るように配置を変えた。これは結構効く。
底円板に無かった中心線を追加。投影機円筒と外筒、底板の位置決めがやり易くなる。
極軸の台座部のりしろの位置変更。この部分は、台座が目盛の付いた外筒のストッパーになっている。
外筒がぶつかる位置にのりしろを移動する事で、のりしろの紙の厚み分だけ外筒がずり落ちて、極軸側の目盛が隠れて見えにくくなる傾向を改善した。
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極軸の台座部のりしろ
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外筒を装着した状態
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豆電球ソケットを取付ける穴に、折りしろを設けた。これは当時作った時にもやった記憶がある。こうしておくと、ソケットがきっちりはまって安定するのである。
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折りしろを付けた電球ソケット穴
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豆電球の周りに、地平線を表す影ができるように、円筒型の被いを設けた。これが無いと、北天の星が床にも投影されてしまうためである。
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地平線を作る被い円筒
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かくして型紙は完成。
実はインクジェット・プリンタの印刷では、遮光性が足らなかった。
星図板の裏を黒く塗りつぶす型紙も用意した。塗りつぶしの効果は絶大である。ただし、工作中にインクで手がさらに汚れ易くなる。
星を投影する穴は、工作中は、紙に対してほぼ垂直に開けるしかないため、赤道部分や北極部分以外では、光の通り道を確保できてない事が多い。組立後に、投影しながら調整する必要がある。
今回の型紙では、星の数が多いために、星座を見つける事がかえって難しくなった。しかし、この穴の調整によって、意図した見え方にする事ができる。この作業をしていると、ちょっと偉くなった気がする。なにしろ天球を好きにしているのだから。
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壁(左側)のすぐ脇で投影している様子
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一応オリオン座に見える
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